思うこと

水を汲みに

昨日は友人である役者の諏訪井モニカちゃんが出演する

「ミロウのヴィーナス」という舞台を観劇してきました。

完成度といい演出といい、どれも素晴らしかったんだけど

意外なテーマが含まれていて、それになんだか触発されて、

今ここで筆をとっている。

 

今日は長崎に原爆が落ちた日。

先日は広島。

 

私はもちろん戦争を知らない世代で、本や学校の授業で知ったことしか知らない。

だからそれについて、何も言えない気がするんだけど

「知らない世代」の私たちが、ほんの一行でも、一文でも

こうやって書いたり表現したりすることが

何かになるかもしれないと思って、

誰が読むわけでもないかもしれないけど、今日は書いてみようと思う…

 

小学校の頃から、国語の授業が大好きでした。

教科書に出てくる物語を読むのが好きで、

「モチモチの木」とか「麦畑」「ねずみのつくった朝ご飯」とか

魯迅の「故郷」とか(これは中学校かな)…

特に気に入った物語は今でもいくつも覚えている。

 

だけど、教科書には必ず、「戦争」に関する題材があって

物語だったり、フィクションだったり、様々な形で必ず収録されている。

私はそれがとても苦手でした。実を言うと。

「ちいちゃんのかげおくり」とか「一つの花」とか

戦争を題材にした物語。

それを学ぶ時になると、心無しか暗い気持ちになった。

 

ジブリの「火垂るの墓」は、怖くてずっと見られなかった。

ジブリで唯一見ていない作品だった。

昨年、やっと見ることが出来た。

 

 

たしか小学校高学年のとき、家族で九州に旅行に行くことがあった。

そのとき、両親が「長崎の原爆資料館に行く」と言ったとき

私はすごくすごくそれが怖くて、嫌で、

いきなり不機嫌になってしまったのも覚えている。

結局、資料館には行った。

知らなければならないことだった。

 

 

高校生のとき、母とふたりでベトナムに行ったことがあります。夏休みの旅行で。

そのとき泊まったホテルで、NHKが見れたので、私はテレビをつけて見ていた。

原爆の特集だった。

広島に住む、被爆者の女性が、

亡くなった方への慰霊のために、毎年毎年、山の奥の滝まで水を汲みにいき

あのとき水が飲めずに亡くなっていった人々へ、供養の水を捧げているという

そういう特集。

 

その女性は高齢で、私の記憶では少し腰も曲がっていて

その小さな小さな体で、ひしゃくを滝に突き出して水を汲んでいた。

滝の水の勢いはすごくて、その中にひしゃくを突き出し続ける女性の腕が

その力で折れてしまいそうなほどなのに

その方はずっとひしゃくを突き出していた。

水は激しく、ひしゃくからあふれ続ける。

その女性はひしゃくを落としてしまうことなく、その腕はずっと滝の中に打たれていた。

テレビ越しに見たその姿を、今でも覚えている。

 

ふと思って調べてみたら、その方はおそらく宇根利枝さんという方。

http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20120213141144132_ja

2012年に他界されるまで、この水汲みの運動をずっと続けていたそうです。

 

 

 

高校の社会の先生は

「世界最大の犯罪は『戦争』であり、世界最大の福祉は『平和』だ」

と言っていた。誰かの言葉だったかもしれないけど。

 

 

 

私には、どうして戦争が起こるのか、わからない。

私たちはずっとずっと、戦いを繰り返して今ここにいる。

社会科で勉強した日本の歴史、世界の歴史、

そのほとんどは戦いの歴史だった気がする。

いくつもの戦があって、乱があって、

この世界で、かつて戦場ではなかった場所なんて

存在するのかと思ってしまうほどに。

 

 

 

毎朝起きて、顔を洗って、朝ご飯を食べて、コーヒーを飲んで

家を出て、働いて、人と会って、会話して

家に帰って来て、お風呂に入って、布団で眠る。

 

今のこの日々は、遠い昔、近い昔に

だれかが夢見た日々でしょうか。

 

 

今なんとなく、この国に漂うような閉塞感も

毎晩、部屋で泣く人がいるような、泣けない人がいるような

そんな感触も

 

 

私には世界の平和を描くことはできない。

けれど、私の好きな人たちが

ずっと笑ってくれたらいいと思う。

今まで出会った人、これから出会う人、たとえ小さな関わりであっても

私の好きな人たちが、笑ってくれたらいいと思う。

そしてそれは、たぶんみんな、

みんなみんなが、思ってることなんじゃないかと…

そう思う。

 

 

私は戦争を知りません。

けれど、命が生まれて、命が消えていくこの世界で

今日も生きている。

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